普通江の住宅竣工式に関する報道記事の感想

2022年4月14日に放送されたフジテレビの番組「イット!」


金正恩総書記は、次のように述べている。

「わが党の活動の最高原則は、人民に何うらやむことのない豊かな生活をさせることである。」

2022年4月13日、普通江川岸段々式住宅区の竣工式が開かれ、金正恩総書記がテープカットを行なった。

800世帯規模となったこの住宅区は、党と国家の発展に寄与した功労者のために、金日成主席の邸宅を撤去して建設された。

竣工式のようすは、朝鮮中央テレビの映像を引用するかたちで、朝鮮国外からも報道されている。

日本のフジテレビは、情報番組「イット!」で「金正恩総書記があの“看板アナ”に新居をプレゼント…手をつないでエスコートまで?豪華絢爛な内部と贈呈の狙いに迫る」と題し、「看板アナウンサーのリ・チュニさん」に「豪華ごほうび」が贈られたと報じている。

FNNプライムオンライン. 2022.4.14. https://www.fnn.jp/articles/-/347085

日本は「北朝鮮」と国交を持っていないものの、報道については活発に行なわれることから、今回の住宅竣工式もネタになると、報道各局が考えたのだろう。

フジテレビが伝えたニュースの中身を見ていくこととする。

「建設大戦」に翻弄される日本の記者

報道では、住宅区を「平壌市内に建設された、高層マンションを含む集合住宅」と紹介しており、記事の後半には「豪華住宅の中には、80階の高層マンションもある」とも言及している。

ところで、平壌市では、毎年1万世帯の住宅を建設し、2021年からの5年間であわせて5万世帯の住宅を市民に供給する計画が進められている。

このうち、初年度に建設が行なわれた「ソンシン」「ソンファ」地区の住宅が完成を迎え、2022年4月11日に竣工式が行なわれている。

「80階の高層マンション」というのは、市民向けに建てられた1万世帯住宅のうちのひとつであり、「豪華住宅」=「普通江川岸段々式住宅区」の計画ではない。

人民軍兵士を含む、大量の建設者たちの夜を徹した作業により、平壌には次々と建築物が建てられていく。

米国をはじめとする敵対勢力の経済制裁をものともせず、雨後の筍のように急速な成長を見せる平壌の町並みを目にした記者が、その計画の大きさに圧倒され、豪華住宅と高層マンションを取り違えたか、単なる勘違いか。

いずれにしても、この報道では、功労者たちに対して80階建ての「タワマン」が贈呈されたようにみえる。

日本で「北朝鮮」について話すと「エリートだけは優遇されて一般市民は飢え死にしているんだろう」という声が少なくない。

こうした報道の細かい表現が、日本での「北朝鮮」への(正確でない)イメージを作り上げることを助けているように思う。

なんだか日本語も怪しい

このフジテレビの報道では、いくつかの日本語についても引っ掛かるところがある。

リ・チュンヒ放送員は、住宅の供給を受ける対象となった功労者であると同時に、重要報道を伝える放送員でもあることから、自分の名前が入ったニュースを自ら読むこととなった。

フジテレビの報道は、それを「自画自賛」「リ・チュニさん自らが褒め称えた」と表現している。

フジテレビでは、アナウンサー自身で読む原稿を選ぶことができるのかどうか知らないが、まるでリ・チュンヒ放送員が「私が読みます」とでも言ったかのように書くのはいかがなものか。

朝鮮語を訳出したものも、もう少しどうにかならないかと思う部分が見られる。

「金正恩同志から、花のような少女時代からきょうに至る50年間、党が用意した革命のマイクと一緒に貴重な人生を歩んできたリ・チュニ放送員のような、北朝鮮の宝のために惜しむものがないというのが我が党の真心だと話し、80歳近くになっても俄然として青春時代の気迫と情熱で、我が党の声、北朝鮮の声を世界各地に響かせている彼女の功績を高く評価してあげました」

「金正恩同志から」の部分は、原文では《김정은동지께서는》となっている。

ここは「金正恩同志は」あたりがいいだろう。

「俄然として」と書いてしまったのは痛い。

デジタル大辞泉「俄然」の解説. コトバンク. https://kotobank.jp/word/%E4%BF%84%E7%84%B6-463043

《여전히》=「依然として」(朝鮮中央通信の日本語訳は「相変わらず」)とすべきであった。

多少の問題はあるものの、映像を見ていると面白いと感じる場面がある。

読み上げている内容をそのまま文字にしているから、当然といえばそうではあるが、字幕には「敬愛する」「切られました」と尊敬表現が使われている。

さらに、総書記の名前を強調するところまで朝鮮式だ。

金正恩」が大きいというより「総書記」が小さいといった方が正しそうだ。

国を笑いのネタにする危険

管理人の記憶では、自分の周りで「北朝鮮」は「おもしろ国家」として扱われてきた。

厳しい気象条件や経済制裁が、朝鮮の人民生活を難しくしているなかで、同国の人民は、日々工夫を重ねて「自力更生」の精神で生きている。

われわれや西側諸国の人々には、その生活がおかしな風景に感じられることもあるだろう。


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